Je pense

日々思うところを気の向くままに ... Since 17th January, 2006

 
 

さて、序の1序の2と前置きばかりが長くなってしまいました。 今回からやっと本論です。

人権 「擁護」 とは名ばかりでむしろ人権侵害推進法案とさえ呼びたいこの法律案ですが、感情的に批判ばかりしていても無益だろうと思います。 そこで今回は、この法案がどのような内容のものなのかをご紹介します。

人権擁護法案は、その目的達成ため 「人権委員会」 の設置を定めています。 ただし同委員会の構成人員は委員長を含めて僅か 5 名に過ぎず、かつ、そのうちの 3 名は非常勤とされているため、この委員会が実務のすべてを行うことは事実上不可能です。 そのため、同法案が成立した場合、この法律の執行は同委員会から委嘱された 「人権擁護委員」 によって行われることになります。

人権擁護委員は全国市町村単位に置かれ、その定数は 「全国を通じて二万人を超えないものとする」 (法案二十四条) とされています。 また、人権侵害の申し立てがあった場合に行われる調査に関しては、「国の他の行政機関、地方公共団体、学校その他の団体又は学識経験を有する者に対し、必要な調査を嘱託することができる」 (第四十条) とされていますので、調査に関しては、人権委員会が認めた組織・団体でさえあれば事実上どんな組織・団体でもこれを行うことが可能となっています。

さて、同法案が国会において成立し、そして施行された場合、世の中はどのようになるのでしょうか。 以下、架空の人物 A 氏が同じく架空の人物でん助氏によって人権侵害を受けた場合を例としてこれを記します。

 
 

前回、そして前々回と、歴史教科書問題に関する安倍官房長官の発言を朝日新聞がどのように取り上げたかについて記し、同紙の記事および社説に見られる論理の粗雑さと卑劣さを批判しました。 それにしても、今回の件に限らず最近の朝日が安倍氏に対して向ける攻撃の激しさには尋常ならざるものがあります。 記憶に新しいところでは、NHK に対して番組改変圧力をかけた政治家として真っ先に名指しされたのも同氏でした。 考えてみればそれも当然のことで、安倍氏と言えば自他共に認める 「タカ派」 であり、また、北朝鮮はもとより中韓両国に対しても強硬な姿勢を貫き続けている政治家です。 言うなれば朝日の政治的スタンスの対極に位置するような人ですから、その安倍氏を朝日が目の敵にするのはごく当たり前のことなのかもしれません。 今後も朝日は同氏を 「最重要攻撃目標」 とし、同氏の信用を失墜させることを目的として、ことあるごとに批判・攻撃の記事を書き続けていくでしょう。

さて、人権擁護法案について記す今回の記事を朝日新聞と安倍氏に関するエピソードから書き始めたのには訳があります。 それは、同法案に関する朝日の立場が賛成であるのに対して安倍氏がこれに反対と、両者の立場がこれまた真っ向から対立しているからです。 このカテゴリーでは、次回から何度かに分けてこの人権擁護法案なるものがなぜ悪法と考えられるのかについて私見を記していこうと思っていますが、「人権」 と聞けば 「尊重し守られるべき大切なもの」 と考えるのが一般的でもあり、普通でしょう。 そうであれば 「人権を守る法律」 である 「人権擁護法 (案)」 がなぜ悪法なのか、不可解に思われる方も少なくないかと思います。 そのような疑問に対する回答も、このブログの中で分かりやすく書いていければと思っています。

その前に今回は 「序の2」 として、同法案および類似の条例等に関するこれまでの経緯などを記しておこうと思います。 記事の中では、わかる範囲でできるだけ多くの資料をリンク付きで紹介するようにしていますので、二次資料としてもご利用いただければと思います。

 
 

人権擁護法案 - 日本国憲法で保障された基本的人権を守るための法律 (案) という、いかにも 「いい法律」 っぽい名前の法律案だが、その正体は、この美しい名前から受けるイメージとは正反対の、恐怖の法律案である。 万が一これが成立してしまえば、戦後でも一二を争う天下の悪法となることは間違いなしというシロモノなのだ。

この法案がなぜそれほどまでの悪法と考えられるのかという点など、詳細は今後本ブログの中で記していくつもりだが、今回は 「序の1」 ということで、コラムニストの山崎浩一氏が 『週刊アスキー』 今週号 (*1) に執筆していた記事の一部を紹介する。

その記事とは 118 ページのコラム 『今週のデジゴト』 である。 ここで著者の山崎氏は、人権擁護法案を 言論規正法になりかねない と書いて警告を発している。 まさに同氏の言う通りで、人権擁護法案の本質は言論規制法案であり、言うなれば 「平成の治安維持法」 とも呼ぶべきものなのだ。 そして、その後に続く一文が同コラムの最大のポイントなのだが、そこで同氏はこう書いている。

人権という言葉は、もともと厳密には国民が国家に対して主張する基本権だったはずだ。 それがいつの間にか拡大解釈されて、だれかがだれかを不快にしたり困らせたりすること一切合切をひっくるめて 「人権侵害」 と呼ばれるようになってしまった。 つまり 「おまえの言うことは不愉快だ」 とか 「あんたは私を傷つけた」 という主観的な定義や基準によって、発言が規制されたり罰せられたりしかねないのだ。

そう、人権侵害とはもともと国家という強大な権力機構が国民に対して行ってきた悪行だった。 そして、国家が国民に対してそのような悪行を行えないようにし、国家から国民を守るために日本国憲法が保証したのが 「基本的人権」 である。 ところが、こともあろうにこのような歴史的経緯を持つ (基本的)人権 を盾に取って、国家が国民を罰する法律を成立させようと目論んでいる。 これこそ本末転倒というものだろう。 いや、それとも 「盗人猛々しい」 と言う方が適当か。

実はこのコラム、本来は人権法案批判をメインとして書かれたものではない。 昨年末にアメリカ議会で可決され、ブッシュ大統領が署名までしてしまったという 「新ネット関連法」 について書かれたものなのだ。 再び山崎氏のコラムからこの法律の条文を引用する。

電気通信または他の種類の通信を行うことができる任意の装置またはソフトウェアを利用する者が、インターネット経由で、自分の身元を明かすことなく、受信者を不快にしたり、罵倒したり、困らせたりする意図をもって発信を行った場合は、第18項の既定に基づく罰金計、2年未満の懲役、またはその両方に処するものとする。

とまあ、例によって法律の条文なんてモンはやたらと小難しく書いてあって理解に苦しむ場合が多いのだが、そこは著者の山崎氏は心得たもので、以下のように わかりやすく翻訳 してくれている。 その翻訳部分を再び同コラムから引用する。

インターネット上で、あんたが身元を明かさないまま、だれかさんを不愉快にしたり困らせたりしちゃったりなんかしたら、罰金か懲役かその両方を科しちゃうんだもんね。 クーックックック

けだし名訳 (?) ではあるのだが、残念ながら今は氏の名翻訳家ぶりを賞賛している場合ではない。 なにしろあの自由の国アメリカでこんな 「トンデモ法律」 が議会で現実に可決されてしまったのだ。 となれば、同じことが日本でも起きないとは誰も保証できないということにもなる。 すなわち人権擁護法案が国会で可決成立してしまうという悪夢が現実になる可能性もゼロではないのだ。

私たちは、この悪夢を絶対に現実のものとさせてはならない。 そしてそのためには、一人でも多くの人がこの悪法の正体を知ることがまず最初に必要である。 筆者・でん助はまことに矮小極まりない存在に過ぎないが、以後、このブログで人権擁護法案に関するいくつかの記事を記し、悪夢の現実化を避けるために微力を尽くす所存である。

(*1)  『週刊アスキー』 2006 2/28 号 (通巻 577 号)

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